IMAGINE ONE WORLD KIMONO PROJECT(イマジンワンワールド キモノプロジェクト)様からお声がけいただきアフリカの「ギニアビサウ」という国の振袖を制作させていただきました。(2019年7月完成)

このページでは、「作者の日々」で工程ごとに制作過程をアップしていた内容を1ページにまとめております。どのような過程を経て完成したかを知っていただけたらうれしく思います。(2018年11月か12月頃~2019年7月)
 

IMGINE ONE WORLD KIMONO PROJECT とは

2014年にスタートした、2020年を目指し、各国の文化・歴史・自然をテーマに描いた206か国(国・地域)オリジナルKIMONO(振袖・帯)を、日本を代表する着物作家の方々と共に全国で制作を進め、各国をイメージしたKIMONOを着たモデルたちが手を繋ぎ「世界はきっと、ひとつになれる」ことを発信していくことを目指したプロジェクトです。(2019年11月時点213ヵ国)

半年以上の時間をかけて完成

長い時間をかけて、持てる技術を全て使い完成させて思ったことは、「やっと」というべきか、「とうとう」というような、少し複雑な感情でした。

実際に生地に作業をし始めたのは2019年に入ってからですが、お国を調べたり、構想を練っている時間を加えると、もっと前からかなりの時間をかけて制作していたんだなと思いました。

最初にギニアビサウという国名を聞いたときは、?となりましたが、お声をかけていただけたことは光栄なことなのでお引き受けしたことを思い出します。

ネットで検索してもサクッとは情報が出てこず、外務省やJICAにも問い合わせしましたが、有力な情報はあまりなかったのを覚えています。

それでもネットで探し続けて、日本のどこかの機関の報告書をみつけ、ギニアビサウには何ヶ所か保護地区があり、様々な動物がいること、外務省から日本に2人の留学生がいることを聞いていたうちのお1人の情報を日本国際協力センター(JICE)の広報(活動報告)でみつけることができました。ギニアビサウの留学生が都内の小学校で講演をしたという記事でした。そのJICEに問い合わせをして、JICEの方が間に入ってその留学生とコンタクトが取れたことは大きかったです。

サメの仮面や牛の仮面をつけて踊る「牛の仮面踊り」、「サメ踊り」はギニアビサウ特有のものだと聞くことができ、仮面の画像も数枚送っていただきました。ギニアビサウ特有のものをネットで探すのには限界があったのでそれが聞けたことと、手元には1枚の牛の仮面の画像しかなかったので大変助かりました。

そういった情報収集を経てカシューナッツの栽培、保護地区でイルカ、海牛、ウミガメ、フラミンゴが多くみられるということに焦点を当てて構図を考えました。

最初は水生生物主体での構図を提案したのですが、、ギニアビサウには海だけでなく陸地もあるからそちらの要素も含めてはどうかと修正依頼を受け、サバンナモンキーを入れて構図を完成させました。

カシューナッツとマングローブ林、フラミンゴで額縁のように水生生物を囲み、図案に奥行きを出し、水生生物は空からの視点と水中からの視点のふたつで表現しました。私は絵画的な表現が多いので、視点は一方向から描くことがほとんどですが、今回は1枚の絵の中で視点をふたつにして、尚且つ自然な形でそれを表現することにチャレンジしました。

配色もギニアビサウの国旗に使われている、黒、緑、黄、赤を連想させるように、マングローブ林を黒、カシューナッツを緑、マングローブ林の向こうの背景(土をイメージ)を黄、フラミンゴを赤(厳密に言えばピンクですが赤ということで表現しています。

 

小下絵:A4サイズなどの小さな紙にデザインを描く


 

草稿:小下絵で描いたデザインを原寸大の紙に拡大して描きます。

 

下絵:下絵羽(大まかに着物の形に縫う)の状態で、草稿を生地の下に置き、ガラスのしたからライトを当てて輪郭線を生地へ写していきます。

 

 

糸目糊置き下絵で写した輪郭線の上に糊を置いていきます。この糊が川でいう堤防の役割をするので、彩色した色が柄からはみ出さず、また、滲まず隣り合う色が混ざり合わずにシャープなものとなって絵画のような表現ができます。最終、糊を洗い落とすので糊の部分が白い輪郭線となって現れます。これは友禅の特徴でもあります。

 

色挿し全体像を把握できる順番で彩色していきます。イメージしやすい自分の中ではっきりと決まっているものから順に進めていきます。動物はリアルになりすぎないよう注意し、あらかじめ草稿を見ながら完成のイメージを思い浮かべて配色を考え、生地にあたりを付けてその通りに彩色し、雰囲気をみて修正しながら筆と刷毛を使って染料を塗っていきます。

 

葉っぱの光沢を表現するため、一珍(いっちん)という技法を使っています。小麦粉とミョウバンを混ぜたものを筆でかすらせながら艶を表現したいところに置いていき、乾いたら上から色を塗ります。一珍を剥がすとその部分が一段階薄くなるので艶を表現できます。この技法は、ひび割れなどで色が入り込んでくるので、それが「味、雰囲気」なのですが、一珍を置いたところがそのまま、きれいに上がるとは限らないのでそこが難しいところです。剥がしてみるまでわかりません。

 

伏せ:色挿しを終えると染料を定着させるため生地を蒸す「蒸し」をします。蒸しを終えると「伏せ」を行いますが、今回は、表から伏せて、裏の浸透具合をみて、少し浸透具合が悪いと感じたので、裏からも柄の縁だけ伏せることを決めました。
糊が浸透してないと、生地の裏側から染料が柄のなかに侵入してきます。
それを防ぐために裏からも伏せます。生地を裏返して下からライトで光を当てて糸目糊の裏までしっかりと伏せます。

今回は柄全て伏せるのではなく、海中の生き物は伏せずに置いておきました。
1度、地染めしてからそれらを伏せようと思います。
初めは伏せるつもりでしたが、1度地色をかけた方が海中に居るように彩色した色が馴染むと思ったのでそのようにしました。

「伏せ」とは、糊や蝋などで柄を防染し、柄が地色で汚れたり、染まったりしないようにすることです。

 

裏からも防染します。

 

引染:刷毛で地色を染めていきます。先ずは胴中の色を、海中のイメージで淡いブルーで染めた後、肩と裾を濃いブルーでぼかしました。

イルカなど、色挿しした柄を伏せないで、上からかぶせるように染めたので、うまく地色と馴染んでいい雰囲気になったと思います。

肩の部分は、水面の波を糊で伏せ、裾の部分は海底のゴロゴロした表現を筆で彩色し、濃いブルーで暈します。

肩と裾の暈しを終えた後、波の濃い部分と海底を筆で彩色して調子をつけます。

胴中の地色を染めた後、波の明るい部分を糊で伏せます。

水面を表現するように濃いブルーをぼかします。

 

裾部分は海底を意識して墨色で彩色した後、濃いブルーでぼかします。色が乾いた後も墨色で表現した海底の部分をさらにはっきりするようにもう一度墨色で彩色しました。肩部分の波も色が乾いた後、濃いブルーで影の部分を彩色しました。

 

仕上げ:「引染」が終わり、色が乾くと「蒸し・水元」になります。「蒸し・水元」は、染料を定着させ、生地の余分な染料や糊を洗い落とす工程で、専門の工場へお願いします。

「蒸し・水元」から上がってくると、生地を並べて調子を見て「仕上げ」を行います。
お猿さんの毛並みを描いたり、フラミンゴやイルカなどに金箔を貼ったりします。

サバンナモンキーの仕上げ前

サバンナモンキーに毛並みや瞳を描きました。

フラミンゴの翼に金箔を貼り、フラミンゴの群れにアクセントをつけます。

海中の生き物には銀箔でアクセントをつけます。

 

完成:仮絵羽(仮に着物の形に縫い合わす)にして完成です。

全体

右袖

左内袖

上前

背 サバンナモンキー

背 牛仮面・サメ仮面

八掛

八掛 ウミガメ・イルカ